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断片的、あまりに断片的な

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紀伊半島を巡る旅Ⅰ~プロローグ~

私が実家に出戻り、カオス状態になっていた部屋を片付けてやっと生活が落ちつき始めた頃、24時間働くリゲイン女で朝も夜もほとんど顔を合わせることのなかった隣のB-GIRLが、なぜだか何日も家にいる。晩御飯を用意したり、私の洗濯物をたたんでいたりして気味が悪かったが、ろくに休暇も取れず家に帰れずに何年も働きづめだったから、これぐらいの休みはまぁ当然だろうと思ったし、何とはなしに理由を尋ねても、Bは曖昧な答えを返すだけだった。Bが会社を辞めたとはっきりと知ったのは、彼女が洗濯物をたたみ始めてからずいぶんたっていた。

そんな久しぶりに時間もでき、確定申告で数十万円戻ってきたBが、本格的に次の職探しに取り掛かる前に、どこか旅行に行きたいと言ってきた。いろいろと作業が立て込んでいる時期であり、2,3日といえど何もできないのは後で泣きを見ることになるだろうなぁ、とわかっていながらも、その誘いに乗ることにした(そして帰ってきてから、実際泣いた)。        行き先は近場の海外も含めて数箇所挙げられたが、なかなか互いの興味が重ならず、もうどこでもいいしなんでもいいやという気分にもなったのだが、突如、熊野が候補地として思い浮かんだ。2人とも、小学生の頃から読んでいる田村由美の未来戦国漫画『BASARA』で描かれた熊野のエピソード(熊野古道歩き、捕鯨→これは今熱い話題だが)に馴染みがあったというのもあるし、熊野出身の小説家である中上健次の作品をいくつか読んでいて、あの神々しくて暴力的な「性/聖」なる山々の風景に思いをはせてもいたからだ。

というわけで、行き先はとりあえず熊野古道という、なんとも漠然としたものに決まった。もろもろの計画は時間のあるBにまかせたが、海と山に挟まれてわずかに平地があるだけの熊野一帯は、アクセスが非常に悪い。来た道を戻るか、半島を一周するしかないのである。名古屋から入り、大阪に抜けることにした。

 
「半島とはどこでもそうであるように、冷や飯を食わされ、厄介者扱いにされてきたところでもある。理由は簡単である。そこが、まさに半島である故。紀伊半島の紀州を旅しながら、半島の意味を考えた。朝鮮、アジア、スペイン、なにやら共通するものがある。アフリカ、ラテンアメリカしかり。それを半島的状況と言ってみる」(中上健次『紀州ー木の国・根の国物語』)

ところで、旅に出る前日におかしな、そして恐ろしい夢を見た。私はなぜかネオナチに追われる身で、山の中を逃げ回っている。そこは熊野である。きゃつらは小型ヘリに乗り込み空から私を探している。突如頭上にヘリの「ドドドドドドド・・・」という音が響き渡って慌てて身を隠したり、ある民家で一息つかせてもらっているところに、二階の窓から爆弾を放り込まれ命からがら脱出したりなど、ハリウッドさながらの逃亡劇を繰り広げていたが、ついに前後からネオナチのヘリに挟みこまれてしまう。そこで死にたくない私は右手を挙げて、「ハイルヒットラー!」と言ったのだ!!あまりの、自分の恐ろしさに、飛び起きる。しばし心臓がドクドクと鳴る。

ところで、舞台が熊野というのはわかるが、ネオナチは何なんだろうと考えていた。「前の日に『アドルフに告ぐ』でも読んだんじゃない?」と言われるが、そんな事実はない。知り合いにこの夢の話を何度もし、「ネオナチ、ネオナチ」と繰り返しているうちに、やっと気がついた。そう、熊野の地名の一つ、「那智」である。なんとも単純で、恐ろしい変換をしてくれる、夢って奴は。
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