忍者ブログ

断片的、あまりに断片的な

Home > ブログ > > [PR] Home > ブログ > Essay > カレンダーに寄せて

カレンダーに寄せて

 ベッドに入ってごろりと横になりながら、寝るまでの30分から1時間ほど何か「軽い」本を読む。もう眠たくってかなわんという極限状態に自分を追いやって眠りにつく、至福の一瞬である。ここでいう「軽い」本というのは、必ずしも内容うんぬんのことを指しているわけではなく、「読まなければならないもの」と今現在の私が考えているものとは全くかけ離れているであろう分野の本のことである。「気晴らし」の「軽さ」である。
 「軽い」本として小説を選択することが多いのだが、困ったことに、物語に引き込まれて逆に頭が覚醒してしまうことがある。そうなったらそうなったで夜が明けるまで読みふけってしまえばいいのだろうし、「朝まで坂口安吾にはまちゃってサ・・・」などとつぶやけば格好もつく(?)のかもしれないが、なぜだか私は自宅でというか、一人で徹夜することができない。
 次の日はたっぷり寝坊出来る休日だろうと、午前2時頃になるとソワソワしてしまう小心者なのである(人によっては2時まで起きてりゃ充分だという人もいるでしょうが・・・)。そうかといって決して朝が得意というわけではない。夜型の彼も、朝方のあの人もうらやましく、自分の中途半端な睡眠型がうらめしい。
 何ごともお尻に火がついてからしか出来ないタイプなので、徹夜の危機が訪れることはたびたびなのだが、自宅で、一人で徹夜したのはこれまでの人生でいまだ一度きりである。修士論文提出前日である。

 話がだいぶそれてしまったが、それほど頭も覚醒させず安眠に導いてくれ、なおかつ話の「キリ」もつきやすいのがエッセイの類である。先日、途中まで読んで投げ捨てていた、赤瀬川原平著『紙がみの横顔』(文芸春秋1992)というエッセイ集を、5年以上ぶりに何気なくベッドに持ち込んだ。
 読み残しはほんの50ページたらずで、「なんでこんな中途半端な読み方をするのだ!」と当時の私に対して少々怒りを覚えたのだが、数ページごとに「キリ」がやってくるこの手の本はそういう運命に陥りやすい。しかし、だからこそ、5年以上たった今でもすんなり途中から読めてしまえる「軽さ」があるのであるが(もちろん内容にもよる)。
 
この本は、赤瀬川氏が1987年から1992年まで「諸君!」に連載していた「紙」にまつわるエッセイをまとめたものである。本、新聞、チラシ、包装紙、名刺やレシートにいたるまで、われわれの周りにはさまざまな紙があふれているが、そのような紙が(無駄に)大量消費される状況をユーモラスな視点で改めて問うという内容だ。
 
その中に「カレンダー」を取り上げている回があった。年の瀬になると銀行や保険会社、商店などさまざまな会社がカレンダーを配る。カレンダーの配布は「今年一年のお礼」が儀礼化されたものであり、「とりあえず」カレンダー配っときゃいいだろうというタテマエの構造が基本だ。
 それらの多くが「見てうんざりする陳腐な新品のゴミ」であるにもかかわらず、カレンダーを作った会社からしてみれば「うちのカレンダーに限って」ゴミ箱にポイされるはずはないと考えられている、「ナルシシズムの印刷物」だと赤瀬川氏は書く。「うちのカレンダーが1番!」と思っているかどうかはよく分からないが、会社のイメージをそぐわないように高級紙を使用したり写真を選択したりなどと、「見栄」がはられていることは大いに考えられる。

 贈与の基本は、見栄を張って相手に負担をかけ合うコミュニケーション、「カリ」のかけ合い返し合いであるが、どう考えても毎年さまざまな会社からいただく陳腐なカレンダーは「カリ」になどならない。「下っらない」とぼやきながら、カレンダーの金具を分別してゴミ箱に捨てるという別の負担はかけられることになるのだが。
 
カレンダー自体、今どれくらい消費されているのだろうか。時計代わりに携帯を・・・という流れと同様に、カレンダー機能もたいていの携帯電話についているし、パソコンで日付やスケジュールを確認するという人も多いような気がする。また、わざわざカレンダーを買ったりもらったりせずとも、パソコンで自分好みのカレンダーも容易に作れる(数字並べるだけだから手書きだって楽なもんである)。
 まぁそうはいっても、書店ではアイドルのカレンダーがたわわにぶら下がっているわけで、ポスターやインテリア雑貨として消費され続けていくのであろうが。

 ちなみに今私の部屋にかけられているカレンダーは、某保険会社からもらった「かわいい」猫や犬の写真の――最も陳腐な種類であろう――カレンダーである。「とりあえず」使用していたはずだったが、あれよあれよという間に1年間犬猫の写真を眺めるハメになった。だからどうということもないんですが。2007年のカレンダー事情としては、もうすでに知り合いから大好きなスヌーピーの日めくりカレンダーをいただいている。365日全てイラストが異なっていてとても気に入っているが、無精者ゆえおそらくカレンダーとして機能することはないであろう。

トップページへ戻る

PR

Comment0 Comment

Comment Form

  • お名前name
  • タイトルtitle
  • メールアドレスmail address
  • URLurl
  • コメントcomment
  • パスワードpassword