忍者ブログ

断片的、あまりに断片的な

Home > ブログ > Dance/Music/Art > 二人のミュージシャン―『ラスト・デイズ』、『ウォーク・ザ・ライン』

二人のミュージシャン―『ラスト・デイズ』、『ウォーク・ザ・ライン』

nirvana.jpg 90年代を代表する音楽ジャンル「グランジ」ロックの中心的存在であったNirvanaのフロントマン、カート・コバーン。彼は19944月、27歳で自殺したといわれている(他殺説もある、まぁこういう話にはつきものだが)。そのカート・コバーンの死に至るまでの数日を、ガス・ヴァン・サントが描いた映画が『ラスト・デイズ』だ。
 憂鬱で退屈なアメリカ郊外に生きる青少年たちの、行き場のなさ自虐的な思いを体現・表現していたカート・コバーン。そんな彼に世界中が熱狂し、多くの崇拝者を生んだ。もちろん日本においても。
 

393f4f26.jpg 私はNirvanaにそれほど熱中したという思い出はないが(なにせradioheadバカだったので)、今でもたまに衝動的に聴きたくなる大好きなバンドの一つ。憂鬱と倦怠、それが90年代(初期)のキーワードのように私には思えるが、radioheadのそれは「中産階級」というポジション、nirvanaのそれは「郊外」という状況にあったのだと思う。今、P.ブルデュー『ディスタンクシオン』を読みながら、ゼミ仲間とあれこれ話しているが、階級が強固に存在するヨーロッパと、「自由の国」を掲げるアメリカとでは、「憂鬱」の所在が全く異なる。
 
 ところでかんじんの映画の内容だが、カートやNirvanaへの熱き思いをもって見たものは肩すかしをくらうかもしれない。マイケル・ピット扮するブレイク(カート)が、川で泳ぎ、食事をし、家にやってきたセールスマンと会話をし、近所を歩き回り・・・といったような淡々とした「死」までの日々が綴られていく。「やはりどうしたって”smells like teen spirit”は聴きたいよなぁ・・・」というようなわれわれの期待は裏切られるというわけだ。
lastdays02.jpg ステージでの
ライブ・パフォーマンス映像もなければ(1人スタジオで歌うシーンはある)、BGMで音楽が流れることもない。銃で自殺したことになっているが、そういったショッキングな場面もなく、朝見たら「ただ」死んでいたという映画の語り。嫁さんコートニーが泣き叫ぶといったおいしいシーンもない。われわれが望むであろうものを排除した映画だ(もっともこの映画は、カートの死にインスパイアされて作り出された作品であり、全くのノンフィクション。あくまでも「ブレイク」という名のミュージシャンの死を描いたもの、ということになっている)。

lastdays03.jpg

 カートに対する安易な共感・感情移入を拒否する。カートは、カート1人で死んでしまったのだ、誰も知るよしもなく。
 そして、われわれはやや欲求不満げに、この映画を見終わってからNirvanaを聴くのだ、たぶん。
(やっぱりアンプラグドはいいね、デビッド・ボウイのカバー"The Man Who Sold The World"が好きです)



d9995501.jpg 『ラスト・デイズ』とは反対に、エルヴィス・プレスリーらと並ぶ伝説のカントリーミュージシャン、ジョニー・キャッシュの半生を描いた『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』は、見るものが容易に感情移入できる語りになっている。幼少期に起こった、自分よりも優秀な兄の事故死、父との確執、レコードを出すまでの道、人気絶頂、憧れの歌手ジューン・カーターとの出会い、妻との不和そして離婚、アルコール、ドラッグ。そして、長いみちのり(20年にわたるプロポーズ!)を経てのジューン・カーターとの結婚・・・といった、ジョニー・キャッシュ再生の物語である。
3cd514ef.jpg ジョニー役のホアキン・フェニックスと、ジューンを演じたリース・ウィザースプーン(この役で、2006年アカデミー主演女優賞を獲得した)は、撮影の数ヶ月前から歌やギターを猛特訓したそうだが、その成果もみごとに生かされていて、ジョニー・キャッシュやその当時の音楽を存分に味わえる。この映画を見るまで、私は全くジョニー・キャッシュのことを知らなかったのだが、それでも十分に楽しめる映画だ。『ラスト・デイズ』は、カートやNirvanaのことを全く知らなければ「??」になってしまうだろう。
 ところで、このジョニー・キャッシュを演じたホアキン・フェニックスは、これまた伝説の俳優リバー・フェニックスの弟である。見ればおわかりの通り、リバーとは全く異なる容姿への少なからずのコンプレックス、その兄の人気絶頂そして死というホアキンの経験は、ジョニー・キャッシュのそれと重なりあう。これまでリバーについて多くを語らなかったホアキンだが、この映画のインタビューではポツリポツリとリバーに対する思いを語っていた。
3ef2b0f5.jpg 映画にも登場したが、ジョニー・キャッシュは刑務所で何回かライブを行っている。CDにもなっているので、興味がある方は聴いてみてください。
 
 2003年に5月に最愛の妻ジューン・カーターが他界、7月のライブを最後に9月にはジョニー・キャッシュも後を追うようにこの世をさった。享年71歳。



61f24285.jpg
“LAST DAYS”

監督:ガス・ヴァン・サント

出演:マイケル・ピット、ルーカス・ハーク
(チョイ役でソニック・ユースのキム・ゴードンと、
映画監督のハーモニー・コリン(!気づかなかった~!)
出てます)
2005年アメリカ






29f4304a.jpgb95d833f.jpg
“WALK THE LINE”
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ホアキン・フェニックス、
リース・ウィザースプーン
2005年アメリカ








トップページへ戻る

PR

0 Comment

Comment Form

  • お名前name
  • タイトルtitle
  • メールアドレスmail address
  • URLurl
  • コメントcomment
  • パスワードpassword