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断片的、あまりに断片的な

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ヴィム・ベンダース『ランド・オブ・プレンティ』

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    ”LAND OF PLENTY”
    監督:ヴィム・ベンダース

    出演:ミシェル・ウィリアムズ、ジョン・ディール

    2004年アメリカ/ドイツ

 



 

 豊かな国「アメリカ」の「病理」を、9.11後のアメリカを舞台にヴィム・ベンダースが描く。

ベトナム戦争で戦ったポールは未だその後遺症をひきずっている。とくに9.11の後の自由な国アメリカが脅かされているという状況がベトナム戦争時と重なり合わされていく。部下には「曹長ソルジャー」と呼ばせ、「我らアメリカ人」を救うため、日がな怪しい人物や施設をパトロールする。アラブ人は全て敵である。すべての疑いは彼らに向けられるのだ。

 そんな彼の前に、姪のラナが現われる。ラナは、伝道士である父親に連れられてアフリカやイスラエルを回り、そこでアメリカに対する憎しみを目の当たりにして、「本当の、あるべきアメリカ」を探すため、10年ぶりに故郷に帰ってきたのだった。彼女は父親の知合いのヘンリー牧師が営むロサンゼルスの伝道所「命の糧」で働いていたが、そこである日事件が起こる。伝道所に出入りしていたハッサンというアラブ人のホームレスが道端で銃で撃たれて殺されてしまうのだ。以前からハッサンの行動に疑いの目を向けていたポールも現場でハッサンが殺される様子を見ており、この事件の背後にある「大きな企み」をあばくべく調査に乗り出す。ラナはラナで、ハッサンの身内に遺体を送り届けたいという思いがあり、そんなそれぞれの思惑を胸にしたポールとラナは、ロスから200キロ以上離れた街に住むハッサンの兄に、ハッサンの遺体を届ける旅に出る・・・。

ポールはもちろんこのハッサンの兄ジョーも疑っていたし、ロスからそれほど離れていないのに閑散としたこの街がアジトであるのではないかと単独調査を始めるが、結局自分の読みが全く見当違いだったことに気がつく。そこで、これまでの自分の行動を省みるのだが、そのむなしさに愕然としてしまう。その夜はその町のバーでお酒をあおり、酔っ払ったままモーテルに倒れこむが、ベトナム戦争の悪夢にうなされる。ポールの病や極度の偏見は、9.11にはじまったわけではない。人を極限状態にまで追い込む戦争は、複雑な後遺症を生むのだ。ラナは「9.11で殺された人びとは報復を望まない、そんな声を聴きにきた」と叔父ポールに告げ、ふたりはトレードセンター跡地へと赴く。これからふたりは少しづつ様々なことを学んでいくのだろう。

9.11あるいは、9.11以降のイスラム世界への報復意識の高まりや、アラブ人などに対する偏見・差別だけを問題としているのではない。その背後(あるいはそれ以前)にある「戦争」という大きな2文字をあらためて考えさせる。また、9.11以降、あたかも問題はアメリカの外にあるものという言説を生み出す体制に対する批判でもある。それは今も、そこに依然としてあるのだ。華やかなロサンゼルスをちょっと車を走らせれば、そこは貧民街。そこに住む人々は政府に、ブッシュにとってはアメリカ人ではないのである。 


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