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断片的、あまりに断片的な

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ブリストル・サウンド、カムバック

先日、久しぶりに新譜CDをお店のカウンターで購入した。新譜に限ってはいつもならネットで買ってしまうのだが、タワーレコードの近くを歩いていたとき、買いたいCDがいくつかあったことをフト思い出し、ブラリと寄ってみたのである。お目当ては10年ぶりに新作を出したブリストル・サウンドの帝王PortisHeadの“Third”と、こちらはコンスタントに新作を出し続ける世界のアネゴMadonnaの“Hard Candy”。

PortisHeadは、今では死語になったが“トリップホップ”というジャンルにカテゴライズされていた。“トリップホップ”とは、響きからも想像できるようにヒップホップや、80年代末から盛り上がりを見せていたハウスやテクノ、ダブなどのダンスミュージックからの影響も受けた音楽を指している。要するに既存のポップミュージックとは異なるポップミュージックという曖昧な定義しか出来ないのだが、ただ、サウンド的には非常に「暗い」という特徴がある。オアシスVSブラーなどが代表する“ブリットポップ”にイギリス中が湧くのを横目に、ひたすらにダークなサウンドを紡いでいたのがトリップホップだったといえる。PortisHeadのトラックメーカーのバーロウは、ボーカルのベスと一緒にやることになったとき、「こんな暗い僕の音楽に歌をつけてくれる人がいるなんて!!」と感激してしまったという話もある。

トリップホップとカテゴライズされるアーティストには、PortisHeadはじめブリストル出身のものが多かったので、「ブリストル・サウンド」なんて異名もあった。お気に入りだったKrustやThe Third Eye Foundationといったドラムンベース畑のアーティストたちもブリストル出身だったから、私には「ブリストル(・ダーク)・サウンド」の方がしっくりくる。(上:The Third Eye Foundationが2006年に出した“collected works”。この方はちょいちょいキリストをモチーフにしたおどろおどろしいイメージを使用する)

そんな「ブリストル一派」も、Trickyはアメリカ行ってダメになり、Massive Attackはメンバーの脱退などあって混迷しているし、Third Eye Foundationはフランス行ってしみったれているし(好きだけど)、エレクトロニカという新たな音楽ジャンルの台頭もあって、過去の遺産となりつつあった。そんななかでのPortisHeadの新譜。ビートも柔らかくなり、ボーカルのベス嬢の奇妙な発声もなくなって地味な印象だが、クオリティの高さは健在だし、この10年間のトレンドに引っ張られることなく、唯一無二の世界を構築していた。何よりも10年間辛抱強くやり続けたという忍耐力には恐れ入る。「ちょっとやってみっか!」という流行りの再結成とは異なり、レコーディングを10年間やり続けたのだから。よくもまぁ解散に陥らなかったものだ。

「我々のアルバムは挫折から生まれる。(故郷の)ブリストルの市議会だったり、人間のコミュニケーション能力の欠如からくるフラストレーションだったり、本当にヒドい曲を聴いたり、そういうことが原動力となって、もっといい曲を書こうという気になる。快適な場所にいても曲は生まれないんだ」とはバーロウの言。不快な場所から何かが生まれる、生み出すという態度に共感する。だから、例えば、安心感があるところまでいって書くという(マリ・クレールのインタビューで読んだ)吉本ばななの小説には全く興味が湧かないのだ。

そういえば、Madonna姉さんはトリップホップ勢に熱心にアプローチしていた時期があった。「私だってPortisHead聴くんですからね!」などと守備範囲の広さをアピールしたりしていたが、当時トリップホップとカテゴライズされていたBjorkにアルバム全曲プロデュースをオーダー(結局Bjorkは1曲提供にとどめた)、RadioHeadにもアプローチしたとかなんとか。そんな鼻のきく姉さんの新譜は、ファレル、ジャスティン・ティンバレイク、ティンバーランドなどヒップホップ界のスター勢揃い。どんなものでも自分のものにしてしまう姉さんのパワーをご堪能あれ。今回のメッセージは、“We only got four minutes to save the world”。

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