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断片的、あまりに断片的な

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ショーン・ファイン&アンドレア・ニックス・ファイン『ウォー・ダンス/響け僕らの鼓動』@東京都写真美術館

舞台はアフリカ東部のウガンダ共和国。30万人もの国民を虐殺した70年代のアミン大統領の恐怖政治以降、クーデターの相次ぐウガンダ。86年のクーデターでは抵抗軍が正規軍となったが、むろん争いは終わらない。現在、反政府組織として最も力を持っているのが、87年に結成されたジョセフ・コニー(左)率いる「神の抵抗軍(the Loard's Resistance Army=LRA)」。

主にウガンダ北部で活動しているLRAは、多くの村を襲撃して多数の住民を殺害している。だが問題を複雑化させているのは、その構成員の大半は、襲撃した村で拉致した子どもたちである、ということだ。襲われたものが、強制的に少年兵にさせられて、また別の子どもを襲ったり、ときに両親を殺す。むろん、少女たちは性的に搾取される(この「少年兵」に焦点を当てたものでは、『インビジブル・チルドレン』というドキュメンタリーがある)。

この襲撃から逃れられた子どもたち60,000人が集まるパトンゴ難民キャンプ。ここでは彼/女らが、そんな現実と対峙するために、歌い、踊る。それをアメリカのドキュメンタリー作家夫婦、ショーン・ファイン、アンドレア・ニックス・ファインが追う。サンダンス映画祭2007ドキュメンタリー部門監督賞受賞、第80回アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門ノミネート作品である。

この作品は大きく分けて二部構成になっている。一部は難民キャンプの3人の子どもたちに焦点をあわせたもの。荒れ果てたのっぱらに作られた父の墓の前で「神様なんていない」といったことを言いながら泣き崩れる子、軍人になった兄の安否を尋ねに単身で基地に乗り込む子。兄の行方はわからない。なぜ子どもを奪うの?と問う。どんな答えだったか忘れたけど、でもその子は「・・・そうか、じゃあしょうがないんだね・・・」といって基地を離れる。

そんなシーンもあるのだが、基本的に3人をカメラの前に立たせた独白のシーンが中心。これがまた、演出がかっている。「ドキュメンタリーは『真実』でも『無垢』でもない」というのはいまや前提だが、カメラの前に立った子どもたちの涙、たびたびの激しい雷のシーンの挿入、ドラマチックな音楽、荒野の木の前で1人たたずむ子どもの引きのシーンなど、いずれも仰々しい。「さぁさぁ、悲しい物語ですよ」という語り。

二部はそんなパトンゴ難民キャンプの子どもたちが、ウガンダでは知らないものはいないという「全国音楽大会」での好成績をめざすというストーリー。歌や踊りといっても7~8種類に細分化されていて、その総合成績を争う。演劇もあった。
ウガンダでは有名なダンサー&シンガーが特訓にやってきたりと、大会までの日々が描かれるが、この二部構成、あまりにも一部と切り離されてしまっている。親や兄弟を亡くした彼/女らが、その大会(というか歌やダンス)にどう関わっているか、という視点が薄まってしまって、第二部はひたすら、勝利への道のみが描かれてしまう。「悲しみ」そして「希望」という段階的な筋書きなのだろうが、実際にはそれはごちゃまぜに入り組んでいるのではないか?一部がこれでもかというぐらい「悲しさ」を提示し続けるのに、二部はあまりにも楽観的なのだ。「希望」を強調したのかもしれないけれど、でもそれは「大会」がなくなったらどうなるのだろう?賞レースが悪いというわけではないけれど、そういうドラマチックな文脈にしか彼/女らが民族の誇りとして受け継いできた歌や踊りはないのだろうか。

46608761.jpg「全国音楽大会」出場のために、首都カンパラに出陣するパトンゴ難民キャンプの子どもたちは、見るもの見るものが全て驚きだ。なにせ、水道水も飲んだことがない、電気を知らない、キャンプを初めて離れるという子たちがほとんどなのである。ビルや車、そしてライバル校の高そうな衣装。逆に都会っ子らからは奇異な目で見られる。むろん大会主催者たちも興味しんしんだ。

練習の合間に、パトンゴっ子たちは街を見学する。自分たちの日常とはかけ離れた世界、恐怖のない世界。そこに一瞬はさみこまれるのが、子どもたちがみんなでコカ・コーラを飲むシーン。「自由」の象徴。援助物資が運ばれるシーンもあるが、それも「U.S.A.」の表記をしっかりと映し出す。「こんな状況は、アメリカでしか救えないのだよ」。ドキュメンタリーは無垢ではない。

"ウォー・ダンス―響け僕らの鼓動"(WAR DANCE)
アメリカ/2007年
監督:アンドレア・ニックス・ファイン、ショーン・ファイン

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