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断片的、あまりに断片的な

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アクラム・カーン+シディ・ラルビ・シェルカウイ『ゼロ度』-@彩の国さいたま芸術劇場2007.1.14

 久々の更新です。

Jan21_31.JPG 先週の日曜日、アクラム・カーン+シディ・ラルビ・シェルカウイによる『ゼロ度』というダンス公演を見てきた。
 アクラムはロンドン生まれのバグラディッシュ系イギリス人(写真左)、シディ・ラルビはベルギー生まれのモロッコ系ベルギー人(写真左)。自らの複雑なアイデンティティについて二人は踊る。
 
 2人は舞台に登場し、同じ動作で同じことをしゃべりはじめる。アクラムの体験がもとになった物語を。
 「彼」は、バングラディッシュの空港で係官らしき人物にパスポートを取り上げられる。なぜ取り上げられたかはわからない、だけどそいつらはニヤニヤ笑っている。一緒にいた従兄弟は「とりあえず言うとおりにしろ」という。パスポートを取り上げられたことに対する怒りは、その係官のニヤニヤ顔を見ているうちに恐怖に変わっていく。
 「自分がパスポート(I.D)にこんなにも依存していたなんて知らなかった」
 「奴らには恐怖はあるのだろうか」。

 安穏と「日本にアイデンティティなどない」などと言えまい。ニヤニヤ笑ってパスポートを取られたことがあるか?
 
4449d2c0.jpg パスポートを失って、「彼」は「ゼロ」になったような感覚に陥る。「パスポートは現代の象徴、現代人の象徴なのだ。たった一枚の紙切れに人間のすべて、幸も不幸も、生も死も含まれている」(三浦雅士)。
 バスで居合わせた死人。バスから運び出そうとする「彼」に従兄弟は言う。「何にもするな、少しでも動けばお前が怪しまれるんだぞ」。バングラディッシュにアイデンティティを持ちながらも、ロンドンで生まれ育ったアクラム。でも、ここでも「よそ者」だ。
 「その国に来たら、その国のルールを守りましょうね」といった語りとともに、西洋人たる(表象する)シディ・ラルビが靴と靴下を脱ぐ(アクラムはずっと裸足だった!)。しばらく裸足で踊ってみせるシディ・ラルビ。そう、その時だけはその国に同化したような身振りを取ることができる、市場で安い服を買って、サンダルを履いて、ダラダラして・・・。
 でも、私たちは靴下や靴を捨てたわけじゃない。また靴下や靴を履ける(履かずにはいられない)。シディ・ラルビはまた靴下と靴を履き、アクラムを足蹴にする。踏む、転がす、蹴る。そこで会場から笑いが起きたのだが、何がおかしいのかわからない(確かに動きとしてはコミカルだったのかもしれないが)。

4f07fc80.jpg 「ゼロ」になった二人のダンスによる対話。ツキを執拗に繰り返し、時には互いの姿がシンクロする。
 舞台に無造作に置かれたアントニー・ゴームリーによる2体の彫刻は、1つではないアイデンティティを指し示している。自身の分身であるその彫刻に歩み寄り、平手打ちをされ、頭をなでられる。自身の中の葛藤。
 でもシディ・ラルビ(西洋人)に踏みつけられ蹴られれば、「彼」も彫刻の「彼」も同じように反応してしまうのだ(シディ・ラルビがアクラムの分身の彫刻を蹴ると、それに合わせてアクラムも蹴飛ばされた彫刻と同じ動作をする)。なぜなら「彼」も彫刻も「西洋人」たりえないからである。 

 「ハーモニーはその内部に対立をはらんでいる。対話は、2人の間に距離が生まれることから始まる」(アクラム・カーン 2007年1月10日朝日新聞夕刊より)

 パスポートが奪われることによって距離が生じた自分の中の「2人」。了解していたはずの世界に対する違和感や対立。調和の裏にはそれをささえる対立があること、もちろん対立がなければ調和などない。

 ダイジェスト映像はコチラ。
http://blog.eplus.co.jp/mv_theatrix/0612_034

[アクラム・カーン Akram Khan]
ロンドン生まれのバングラデシュ系イギリス人。西洋コンテンポラリー・ダンスとインドの古典舞踊様式「カタカリ」をユニークに融合させ、異文化を越境する表現活動を精力的に行っている。2000年に、自身のカンパニーを設立。2004年に発表した『ma』でサウス・バンク・ショー・アワードを受賞したほか、受賞多数。現在、ロンドンのサドラー・ウェルズ劇場のアソシエート・アーティストを務めている。

[シディ・ラルビ・シェルカウイ Sidi Larbi Cherkaoui]
アントワープ生まれのモロッコ系ベルギー人。コンテンポラリー・ダンスの訓練と平行して、ヒップホップやモダンジャズのグループともセッションを行う。1997年にアラン・プラテル・バレエ団(Les Ballets C.de la B.)に参加。2000年にLes Ballets C.de la B. に振り付けた『Rien de rien』で、数々の賞を受賞。2002年には『ダヴァン』を共同創作。以降も、『Foi』(2003)、『Tempus fugit』(2004)等、話題作を次々と発表している。

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