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断片的、あまりに断片的な

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松浦理英子『犬身』

また、通勤時に持ってきた本を読み終えてしまったので(やたらと長い注ページにまたまた騙された)、昼休みに、例の初台駅前本屋さん。ここでは、単純に「楽しむ」ためだけの本を買うのが楽しみ。何かに使おうとか、これ読まなきゃという本ではなく。溢れんばかりの「物語」を前にしてとてもワクワクするひと時。リラックスしながら10畳ほどの狭い店内を一周。すると、松浦理英子さんの新刊単行本『犬身』(朝日新聞社)が出ているのを発見。500ページほどのボリュームにもかかわらず、2,100円。つくづく文芸書って安い、まぁそれだけ学術書は売れないということだが。

松浦理英子氏は、単行本が出たらすぐに買う、唯一の文芸作家さんだといっていい。といっても、本が出るペースはとてもとてもスロー。前作『裏バージョン』が出たのは2000年だから、7年ぶりの新作である。帯には松浦氏の代表作である「『親指Pの修行時代』から14年!」と書かれている。父が、「これつまらん」といって半ば強引に『親指P~』を私に押し付けたのが14年前か、、、と。それを読んで以来、私は松浦作品を読み続けている。当初は父が「つまらん」と言ったのを読む、という反動だったのかもしれないけど。
 
松浦氏は、ジェンダーやセクシュアリティをテーマに作品を書き続けてきた作家だが、今回は、性同一性障害ならぬ、種同一性障害。カラダは人間だが、ココロは犬。そんな女性が登場する。まだ、ほんの20ページぐらいしか読んでないのだが、犬だけに、匂いの描写が強烈だ。しかも、相手の臭い匂い。腋臭、ほとんど掃除されていないおへそのゴマの匂い、ちょっとつぶれただけで激しい臭みを周囲に漂わせる膿の匂い・・・。女は、デブでぐうたらで無能な男に飽き飽きしている(何せ彼女は犬に欲望するのだし)。で、彼女と彼をつないでいるのは、そんな男の強烈な臭みなのだ。それだけかもしれない。この無臭時代にあって。

ところで、この本屋さんは先に言ったように、10畳ほどと狭い。店の半分が雑誌やマンガで占められている状況で、毎日たくさんの本が出版される状況で、この本が店頭に並べられていたのだ。ますます店主(じいさん)に魅かれる。

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