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断片的、あまりに断片的な

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ライブハウスと『ライブハウス文化論』

みなさん、最近ライブハウスに行きましたか?

ミュージシャンであり研究者の、友人宮入氏が『ライブハウス文化論 』(青弓社)という本を出版した。彼の音楽の送り手という立場から、日本のライブハウスの現状、ひいては音楽や社会状況を読むという、ありそでなかった「ライブハウス論」である。

まず、ライブハウスとはなんぞや?ということで、その日本の歴史や、客という立場でしかライブハウスに関わってこなかったものはあまり知ることのない、ライブハウスのシステムあるいはビジネス戦略が説明される。特に、アメリカで多くのライブハウス演奏経験を持つ宮入氏がライブハウスについて書くきっかけとなった問題、「ミュージシャンへのノルマ制」については、この本のキモでもある。
というのは、ライブハウスの「客」=音楽を聴きにくるわれら聴衆と考えるのが普通だが、80年代から導入が一般化されたノルマ制は、ライブハウスの顧客=ミュージシャンという関係を作り出し、強固なものにしたからである。つまり大雑把にいえば、オーディエンスが一人も集まらなくともライブハウスはなんら困ることがない。ミュージシャンに課したノルマで最低運営費が確保されているからだ。

奏者が顧客という図式は、近年話題にのぼる「フォーク酒場」ではよりはっきりと見えてくる。定年になって金と時間を持て余す「団塊」世代の人びとがノスタルジックかつナルシスティックにビートルズといった「青春」を歌いあげるフォーク酒場は、「巨大なカラオケ空間」として機能しているといえるわけだ。(上写真:高円寺ペンギンハウスにて。new residential quarters)
しかし、決して安くはないノルマを背負って、しばしばそれが赤字になりながらもライブハウスで歌うという行為も、フォーク酒場でのカラオケ感覚のような行為に見えることも少なくない。先月もあるライブイベントに行ったとき、一般客が演者より少ない寂しい状況で、ふと彼らがこの場でやることの意味を考えてしまった。以前ある友人ミュージシャンに尋ねたとき、彼は「対バンとのコミュニケーションが中心」と言っていたのを思い出したが、そんな言葉にもライブハウスの顧客=ミュージシャンという図式を読みとることができよう。(上写真:高円寺ShowBoatにて。バンド名忘れたが、ジョイ・ディヴィジョンとかパティ・スミスとかを独自のアレンジ&日本語訳で演奏。三谷幸喜似のボーカル)
私は音楽を趣味とし、赤字でもいいからライブハウスで歌うという行為を否定しているわけではない。むしろ、やみくもにスタービジネスめがけて突っ走るよりも健全だろう、とも思う。誰もがビジネスに出来るわけではないし、する必要はないからだ。しかし彼らにとってみれば「趣味」なものであっても、ライブハウスの客からすれば嫌な言い方だが「商品」である。客だって安くないチケット代を払っているのだから、妙な趣味を見せられるのはごめんだし、またそれを避けようとする。

本書のどこかで指摘されていたと思うし、私自身もそうなのだが、近年ライブハウスに行くという行為は、ある著名ミュージシャンか、あるいは友人のライブを見に行くかの2極化になっていて、フラリと未知の音楽を求めてそこに向うものは少なくなっている。そこには日本人の音楽に対する意識や、音楽環境も関係しているのだが(個人的には場の魅力の欠如もあると思う)、やはり「アンタのナルシスティックな自己表出は御免」という部分も大きいだろう(自叙伝、40分ノンストップ」を聞かされたときには辟易した)。ノルマ制を通した、ライブハウス側とミュージシャンの関係だけでなくて、チケット代を通した客との関係もまたライブハウス文化では重要だ。(上写真:宮入氏withカマチョ)

一般客がフラリとライブハウスに行くということ、そこには音楽やミュージシャンの青田買いという要素があったと思うが、今ではあらゆるノンプロミュージシャンが楽曲をネット上にあげ、ブログを書く。未知な音楽やミュージシャンを知るのに、そして彼らとコミュニケーションするのに必ずしも「場」は必要ではなくなった。そんな時代にあって、なぜミュージシャンはライブハウスで演奏し、客はライブハウスへ足を運ぶのか、そんなミュージシャンと客とのネゴシエーションを次回作に期待(とメールで、口頭でしつこく伝え済み・・・)。

本書出版後の宮入氏ライブに訪れたら、大学時代の仲間たちや、ハワイ大学時代の友人も集っていて、ヤジをとばしつつ出版をお祝いしていた。ライブ後はそんな仲間たちに混じって居酒屋でワイワイ。宮入氏がライブハウスとの「ノルマ」精算でいないあいだに、宮入氏の学生時代の武勇伝(!)をたくさん聞かせてもらいました。ふふ。


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